おうちしごと日報

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「失踪者/カッサンドラ」

久しぶりに更新したと思ったら、また本の話で申し訳ない。

失踪者/カッサンドラ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-2)

フランツ カフカ / 河出書房新社


50/100 (やっと半分かぁ…)

何となく「暗くてよく解らない」印象のカフカだったのですが、
この『失踪者』の印象はドタバタ喜劇そのもの。

主人公のカール少年がヨーロッパからアメリカへ追いやられ、
次から次へと騒ぎに巻き込まれて行くのです。

はっきり言って面白いです。

自分が行きたいほうへ行こうと頑張れば頑張るほど
望まない方向へ流れて行ってしまう、なんてのも
他人事として読むから面白いんであって、
自分の身に降りかかったら怖いけどな。

ここに描かれるアメリカ、すごくリアルな感じなのですが、
カフカ自身はアメリカに行ったことないって言うじゃありませんか。
すごいな、カフカ。

カフカっつったら、ある日芋虫になってしまう「変身」くらいしか知らない人
(わしじゃ)
なんて、読むといいと思います。


もう一つの『カッサンドラ』、これも面白かった。
ギリシャに滅ぼされたトロイアの、
美しく賢い王女カッサンドラ。
未来を予見できる彼女が、自らの終焉の地ミュケナイでの
死を目前にしての回想、それを語るお話です。

これもねぇ。
現代でこういう生きにくさを抱えてる女性、すごく多いと思うんですよ。
女性に限りませんが、でも女性のが多分共感できる。

正しいことを主張すると疎まれる。
彼女は未来を予見できるので、彼女が正しいって言ったら正しいんですよ。
でもそれを父王や兄に進言すると、彼らを傷つけることになる。
→でも、言わないわけにはいかない。だから言う。
→無視される、連れ出される、幽閉される。

ま、幽閉までは行かなくても、ありがちですよねー。

それから、
自分たちの誇りを貫いて、結果として死んでしまうのがいいのか。
それとも何が何でも生き延びるのがいいのか。
という問題。

勝利を続けるとその先にあるのは滅亡である。
(古今東西の帝国は全てこのパターンで滅びてますが。)
それを分かって、自分たちが存在し続けるために
勝つことをあきらめることができるのか。
という問題。
サステナビリティってやつですな。

舞台は古代ギリシャのほとんど神話の世界なのですが
提起される問題は極めて現代的でした。

高校生以上の、読書感想文とかにいかがでしょう?

作者のクリスタ・ヴォルフが旧東ドイツでずっと書いてきた
ということも意識すると、いくらでも面白いこと書けそうですね。
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by yurinippo | 2010-08-09 17:45 | book