おうちしごと日報

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タグ:池澤夏樹=個人編集 ( 17 ) タグの人気記事

「クーデタ」

ブクログで書いた感想をそのままブログに貼り付けることができるようなので
ちょっとやってみました。
なるほどこれならブログのほうの更新が楽。

ジョン・アップダイク
河出書房新社
発売日:2009-07-11

池澤編世界文学全集のなかで一番ページが進まなかった本。言いたいことは分かる。外側からアメリカがどう見えるか、ということなのだろうけどそのテーマはもう新しくない。


というか今、私たちはアメリカに興味がない。もっと言っちゃうと世界に興味がないのかも。自分のことで精一杯で。「世界」文学全集を読みとおす自信が揺らいできた。良くない傾向。

文章も巧みだし構成も素晴らしい。しかし読んで退屈してしまっては元も子もないと思う。
他にアップダイクは読んだことないので何とも言えないのだけど、池澤編全集にはその作家の代表作が収録されているわけではないことはここまで読んで良く解った。それが吉と出たり凶と出たりすることも解った。もっともそれは私の好みの問題なのだが。


79/100
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by yurinippo | 2010-11-15 17:52 | book

「アメリカの鳥」

あーこの主人公ピーターの気持ちすごい分かるーーー!

アメリカの鳥 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)

メアリー・マッカーシー / 河出書房新社


58/100

音楽家の母をもつ内気な青年ピーターは、
第二次世界大戦直後のアメリカで生まれ、
19歳でパリに留学。
ベトナム戦争が影を落とす中、
カントの定説「他者は常に究極の目的である」
(他人を手段として利用しちゃいけないよってこと)を信条として、
内気ながらも誠実に人々との交流を深めようとする彼には
とても好感を覚えます。

しかしこう、外国にいると、自分の生まれた国を
好きになったり嫌いになったりするよね~、ほんとに。
彼にもアメリカの好きな部分と嫌いな部分はあるのだけど、
ちょうどこのころ、好きな部分(鳥とか植物とかの大自然や伝統的アメリカの生活)が次々に姿を消して、
嫌いな部分(物質文明、浪費癖、力を見せびらかすこと)が大きくなる時期でもあり、
それに関しては不幸だったと言えなくもないけど。

しかも、このころのパリ、汚すぎる!行きたくなさすぎる!!(笑)
もちろん今は全然違うとは思いますが…
一方イタリアがすごくいいところに書いてあるので
これ読むと断然イタリアに行きたくなるね。


題名の「アメリカの鳥」だけど、
これは鳥類学者(で良いのかな?)オーデュボンが書いた図版入りの大判鳥類図鑑のタイトルだそうです。
それ欲しい!(笑)
オーデュボンといえば、先日手賀沼のほとりの「鳥の博物館」に行ったとき、
「オーデュボン協会」というアメリカの環境保護団体があるのを知ったのですが、
もうすでにこの本の中にオーデュボン協会出てきてるのね。

(鳥の博物館で聞いたところによると手賀沼もなかなかに野鳥の宝庫であるらしく、
冬になったらまた北からの渡り鳥を見に行こうかな~とも思っています。)

と話は脱線しましたが、
自分の中にある大切なものを守ることが周囲の幸せにつながるような、
そういう規範を持つ(たとえばピーターにとってのカントみたいな)ことって、
若いころには理想だったんだけど、最近じゃすっかり忘れていたよなぁ。

この物語はアメリカがベトナム戦争で北爆を開始した年に終わっているのですが
ピーターがどんな大人になっているのか、すごく知りたいです。
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by yurinippo | 2010-09-04 08:28 | book

「マイトレイ/軽蔑」

蒸し暑いですねぇ。

訳あって旅行へも行けず気晴らしもできず、
家に家族がいても宿題も手伝いもせずそれぞれに勝手なことをしてるうえに、
私一人こいつらの世話をしなくちゃいけないのはあまりに精神衛生上良くないので
強硬手段にうったえ「お母さんも夏休み」宣言をしたところ、
食事の支度や片付け、掃除機がけくらいは3人で何とかしているものの、
やはりマネジメント的家事が残る。

・今日はゴミ出しがたくさんあるから少し早起きしなくちゃ、とか
・冷蔵庫のあれを早く使いたいのだ、とか
・映画に行くなら時間を調べて間に合うように家を出る、あとお金も下ろさなきゃ、
みたいな部分ができないのだねぇ。
主婦業に完全休養というのは無理なのか。

しかし任せた以上、もう知らんぷりをするしかない。
家の中がめちゃくちゃになろうが知ったことか!
しかし後のことを考えると気が滅入って休養どころではない。
なるべくこのカオスを目に入れないようにするために
私は本読んで暮らします。

マイトレイ/軽蔑 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-3)

アルべルト・モラヴィア / 河出書房新社


52/100

ブクログのほうに先に感想書いてしまったので
ほとんど引き写しで失礼します。。。

「マイトレイ」:
ヨーロッパからインドにやってきたインテリ青年と
インド上流社会の深窓の令嬢。
恋に落ちるの「落ちる」が自由落下であるならば、
落下物(アラン)の対象(マイトレイ)への距離が大きいほど
加速度が加わって激突するときの衝撃が大きくなるのは自明の理。

エリアーデはその激突の後遺症として宗教学を極めたのではあるまいか?
なんて言ったらロマンチックすぎ?

「軽蔑」:
小さな思い違い(と夫が思うもの)が重なって修復不可能になる夫婦。
このすれ違いは非常にリアル。
程度の差こそあれどんな夫婦にもあるのだから、
特に男の人は結婚する前に読んどくべき。
というか読んでおいてほしい。
でも女の人も、夫の鈍感さとか、気持ちの伝わらなさへの覚悟のために
読んどくべきなのかもしれない。

著者モラヴィアの最初の妻は「アルトゥーロの島」のモランテ。
そしてこの物語のヒロインのモデル。
モランテの側から見た結婚生活、なんてのも読んでみたいような。
(悪趣味だね、私)

「マイトレイ」はどちらかというと進行形の恋愛に、
「軽蔑」は愛の崩壊にスポットライトが当てられているのですが
どちらも男性目線から書かれており、
しかもその愛の喪失後の姿が驚くほど似通っている点、
かように苦しんでおられる主人公氏たちには申し訳ないんだけれども、
とても面白いです。
(やっぱり悪趣味だわ…)
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by yurinippo | 2010-08-13 18:17 | book

「失踪者/カッサンドラ」

久しぶりに更新したと思ったら、また本の話で申し訳ない。

失踪者/カッサンドラ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-2)

フランツ カフカ / 河出書房新社


50/100 (やっと半分かぁ…)

何となく「暗くてよく解らない」印象のカフカだったのですが、
この『失踪者』の印象はドタバタ喜劇そのもの。

主人公のカール少年がヨーロッパからアメリカへ追いやられ、
次から次へと騒ぎに巻き込まれて行くのです。

はっきり言って面白いです。

自分が行きたいほうへ行こうと頑張れば頑張るほど
望まない方向へ流れて行ってしまう、なんてのも
他人事として読むから面白いんであって、
自分の身に降りかかったら怖いけどな。

ここに描かれるアメリカ、すごくリアルな感じなのですが、
カフカ自身はアメリカに行ったことないって言うじゃありませんか。
すごいな、カフカ。

カフカっつったら、ある日芋虫になってしまう「変身」くらいしか知らない人
(わしじゃ)
なんて、読むといいと思います。


もう一つの『カッサンドラ』、これも面白かった。
ギリシャに滅ぼされたトロイアの、
美しく賢い王女カッサンドラ。
未来を予見できる彼女が、自らの終焉の地ミュケナイでの
死を目前にしての回想、それを語るお話です。

これもねぇ。
現代でこういう生きにくさを抱えてる女性、すごく多いと思うんですよ。
女性に限りませんが、でも女性のが多分共感できる。

正しいことを主張すると疎まれる。
彼女は未来を予見できるので、彼女が正しいって言ったら正しいんですよ。
でもそれを父王や兄に進言すると、彼らを傷つけることになる。
→でも、言わないわけにはいかない。だから言う。
→無視される、連れ出される、幽閉される。

ま、幽閉までは行かなくても、ありがちですよねー。

それから、
自分たちの誇りを貫いて、結果として死んでしまうのがいいのか。
それとも何が何でも生き延びるのがいいのか。
という問題。

勝利を続けるとその先にあるのは滅亡である。
(古今東西の帝国は全てこのパターンで滅びてますが。)
それを分かって、自分たちが存在し続けるために
勝つことをあきらめることができるのか。
という問題。
サステナビリティってやつですな。

舞台は古代ギリシャのほとんど神話の世界なのですが
提起される問題は極めて現代的でした。

高校生以上の、読書感想文とかにいかがでしょう?

作者のクリスタ・ヴォルフが旧東ドイツでずっと書いてきた
ということも意識すると、いくらでも面白いこと書けそうですね。
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by yurinippo | 2010-08-09 17:45 | book

「灯台へ/サルガッソーの広い海」

またまた間があいてしまいました。
特にネタはないですが、本だけは記録しとかないと忘れちゃいますので
頑張ります。

灯台へ/サルガッソーの広い海 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-1)

ヴァージニア・ウルフ / 河出書房新社



48/100

昨年来、ちょこっとずつ読み続けてきた池澤夏樹編世界文学全集も
とうとう第2集に入りましたです。
でも全集そのものは第3集の刊行に入ったようです。
(なかなか追いつかぬ)

しかしわが市の図書館も、ようやく重い腰を上げ、
この全集の一括購入に踏み切ったようですので、これからはもう少し借りやすくなる。はず。

ヴァージニア・ウルフの「灯台へ」は、
登場人物の心の動きを詳細に追っていく手法が、
はじめ退屈で退屈で、読みとおせるか心配だったのです。
でもその手法が、平凡な人々が過ごす平凡な一日が、
なんと複雑で彩り豊かなものかを浮き上がらせていくにつれ、
どんどん引き込まれて行きました。

ある一日と、長い年月(端折って記述してある)を挟んだもう一日の、
たった二日間の描写にもかかわらず、
人生の豊かさと儚さの両方が、そこにはありました。

それからジーン・リースの「サルガッソーの広い海」。
植民地生まれ、という出自によって不幸へと転がり落ちる女性の話。
愛とかお金って、
欲しがれば欲しがるほど逃げていくものなのでしょうか。
だとしたら切ない。
そしてそういうお話は決して少なくない。
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by yurinippo | 2010-07-29 14:42 | book

「鉄の時代」

あ、こちらは少し重たい本ですね。

鉄の時代 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-11)

J.M. クッツェー / 河出書房新社


37/100

狙ったわけではないのですが、
ワールドカップ南アフリカ大会が開幕したタイミングで予約してたのが届きました。

ノーベル賞作家クッツェーは南アフリカの出身。
本作「鉄の時代」はアパルトヘイト政策の崩壊直前、
癌におかされた老婆を主人公にした作品です。

主人公の病状も、主人公を取り巻く社会情勢も
何とも不穏な雰囲気なのですが、
それでも、なのかそれゆえに、なのか、
自分の手の届く範囲の人との絆を積極的に築いていく老婆。

差別と暴力のむごさも相当に堪えます。
たとえば、作品中に肌の色についての記述はほとんどないのですが
誰が白人で誰が黒人なのかは一目瞭然です。
アパルトヘイトはそれほどまでに徹底している。いた。
主人公の目の前で、まだ10代の知り合いの少年が殺されたり。

それでも、
主人公の何代も前のご先祖たちが犯した罪ゆえに引き起こされる不幸を
全て自分のものとして引き受ける覚悟には
とても強い感銘を受けます。

なので読後感はさほど悪くないです。

サッカー見ながら南アフリカに少しでも興味が湧いた方は
読んでみてはいかがでしょうか。

意外にも、差別は遠い国にだけあるものではないことに気づくかもしれません。
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by yurinippo | 2010-06-14 18:08 | book

「アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家」

アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-12)

エルサ モランテ / 河出書房新社


35/100

「アルトゥーロの島」!これ好きだ!(笑)
ナポリ湾に浮かぶ小島に古い邸宅。
野生児のように暮らす、母のない14歳の美しい少年。
いつも不在の父が、16歳の継母を連れて島に戻ってくる。

…て設定だけで涙でそうなんですけど(笑)

この父、父親としても夫としても最低の部類なのですが、
継母が来る前の少年時代のアルトゥーロの空想のなかでは英雄なのです。
自分だけの完全な世界だった子供時代の美しさは
もう二度と取り戻せない楽園だからこそ美しいのでしょうね。

そういう楽園から、継母という他者に出会って、
大人になり始めるときの激しい痛み。
言ってしまえば「中二病」なのでしょうが、、
でもこんな美しい中二病はどこにも無いな。

一方「モンテ・フェルモの丘の家」もなかなかに切ないです。
だんだんと若くなくなってきて、
人生が思い通りにいかなくなる。
「アルトゥーロの島」が成長に伴う鋭い痛みだとすれば
「モンテ・フェルモの丘の家」は老いるときの鈍痛かな。
14歳の病があれば、40歳の病だってあると思う。
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by yurinippo | 2010-06-10 18:53 | book

「アデン、アラビア/名誉の戦場」

断続的に読んでおります。池澤編・世界文学全集。

アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)

ジャン ルオー / 河出書房新社


30/100

↑の作者名はちょっと紛らわしいですね…
「アデン、アラビア」の作者はニザン、「名誉の戦場」がルオーです。

さて今回、池澤編世界文学全集10冊目にして初めて
ものすごい読みにくい文章にあたりました。
背景についての知識がある程度ないと厳しいものがありますね。
ニザンがアデンに向けて出発したのは1926年だそうです。

ワタクシ、恥ずかしながらニザンという名前にも初めて接したのですが、
この書き出し
「僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。」
ってのは何故だか知っていましたよ。
この有名な書き出しの文章から受ける青臭い反抗心とか、
疾走感とか、頭でっかちな正義感の印象とともに。

10年くらい前かなー、一時「自分探しの旅」とかいう言葉が流行らなかったっけ?

もちろん自分というものが異国の道端に落ちていたり、田舎の商店で売っていたりするはずもなく、
それは「いつもと違う環境に身を置くことで、ちょっと客観的に自分を見つめなおす」という程度の意味でしかないわけですが、
ニザンの場合、アデンへの旅は「自分から逃げ出す旅」なのですね。
自分を形作ってきたパリ、あるいは知識階級、あるいは植民地主義、その他もろもろの社会の不正義から逃げ出す旅。

しかも逃げながら、それらに対してとても怒っているのです。

あまりに腹を立てながら旅をするものだから、
目に映るものすべてに社会の不正義を見てしまう。
美しい海や砂漠といった風景にも、アラビアの異国情緒などにも見向きもせず、
古の港町アデン(いまはイエメンにある)の中にも、自分の逃げてきたはずのヨーロッパ社会を見てしまう。

なので感傷的な旅行記などとは一線を画しているのです。

でもなんだろう、こういう旅行記、最近読まなかったかなぁ、、と思いながら読んでいたら、解説にありました。
レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」でしたよ。
レヴィ=ストロースもこの「アデン、アラビア」に影響を受けたんですって。
なるほどー、そうかも!


一方、もう一つの「名誉の戦場」ですが、
打って変わってこちらはとても読みやすい、流麗な文章。
しかしどちらもそうなのですが、
どうしてこうフランス文学はレトリックを駆使するのでしょうねぇ。
バカは読むなってことでしょうかねぇ(悲)
訳注ホントにありがとう(涙)

「名誉の戦場」は家族の物語です。
どこにでもいるような、平凡で幸せな家族。
一見、滑稽にしか見えないおじいさんの頑固さとか、
おばさんの生真面目な宗教心とか。

その裏に過去の悲劇があることを知るにつれ、
切なく愛おしい気持ちになっていきます。

この家族に潜む過去の悲劇とは第一次世界大戦なのだけれども
きっとどの家族にも、こういう物語はあるのでしょう。
平凡さを描いたからこそ、普遍的に思えるのでしょう。

ジョゼフやエミールの最期ではちょっと泣きました。
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by yurinippo | 2010-05-31 17:29 | book

「暗夜/戦争の悲しみ」

久しぶりの池澤夏樹編世界文学全集です。
今まで読んだこの全集のどれも、
読み始めると面白くてやめられないのに
読み終わるとぐったりするタイプの小説なので
楽しみ半分、怖さ半分といったところ(笑)

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)

バオ・ニン / 河出書房新社


22/100

「暗夜」のほうは短編集で、
中国の作家、残雪によるもの。(美しいペンネーム!)

どの短編も、不思議でちょっと怖くて謎だらけ。
夢だと分かっているのになかなか目覚められない悪夢のような感じ。
(こゆ感じ大好き♪)
私の知ってる中では、川上弘美の「龍宮」とか、小川洋子の「まぶた」とか、
そんなような、、、と思ったら解説ではカフカですと。
そうですね!カフカかもしれないですね!!

ただね、そうやって何も知らずに読むだけならば
不思議な美しさのある面白い短編なのですが、
残雪さんが青春時代を文化大革命の激動の中で過ごしたことを知ると、
この小説中のあらゆるものが何かの寓意なのではないかと
深読みしすぎて頭がグルグルになります。
グルグルしすぎて結局よくわからないのです。
そもそも私、文化大革命のこともあんまりよくわかってないし。


と同様のことが続く「戦争の悲しみ」に対しても言える訳なのですが。

バオ・ニンさんはベトナム戦争で実際に戦った兵士なのです。
私はベトナム戦争についても通り一遍のことしか知りません。

ベトナム戦争を描いた小説も映画もTVも数多あり、
私もいくつかは目にしたこともありますが、
いずれもアメリカ発のものばかりでした。
ベトナム側からの視線に触れたのはこれが初めてかもしれません。

もちろん戦争は残虐なものです。
自国が焦土となる戦争を経験したらその悲しみはいかほどでしょう。
私たちも子どものころから「はだしのゲン」とか「火垂るの墓」とか
見聞きしているわけですからかなり深い意識のレベルで
「戦争の悲しみ」という言葉が想起するイメージを共有出来ていると思います。

しかし、この本がそれだけではないのは
「戦争」を描いてはいるけれども、
本当に見つめているのは「人間」だということ。
戦争が傷つけるのは国土や命や心だけでなく
生き延びたひとの「たましい」までもだということ。

どうかキエンとフォンと、戦争で傷ついたあらゆる人のたましいが
救われていますように。と思わずにはいられません。
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by yurinippo | 2010-04-26 17:56 | book

「アブサロム、アブサロム!」

ちょっと間があきましたが、池澤夏樹=個人編集 世界文学全集の続きです。

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

ウィリアム フォークナー / 河出書房新社


9/100

泥を含んで流れるミシシッピ川のように
絶え間なく流れる物語にとにかく圧倒されます。
読むのに10日間かかりました。


文字の総量がやたらと多い。

何ページも改行が入らないことがある。

語り手の青年もいろんな人からの伝聞なので
重層構造になってて複雑。

という点をなんとか乗り越えて読んでいくと、
饒舌な南部の亡霊が、クエンティン(語り手の青年)ほか
大勢の人間の口を借りて語る壮大な神話の一節なのだというのが分かります。

ここで語られる男、トマス・サトペンもその亡霊の一人。

プア・ホワイトから成り上がり、裕福な農場主となったサトペンが
そのために犠牲を強いた周囲に破滅させられていく物語。
と言ってしまえば簡単なのですが。

とにかく凄い。そして疲れました。(笑)
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by yurinippo | 2010-02-23 15:05 | book