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おうちしごと日報

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「ゲド戦記3 さいはての島へ」

よしっ、続けてもう1巻。ネタバレ注意。

ゲド戦記 3 さいはての島へ
アーシュラ・K. ル・グウィン / / 岩波書店
ISBN : 4000280732


王子アレンが初老のゲドとともに旅しながら成長するお話です。
死があるから生が輝く、ってのが主題なのでしょうね。でも
私が3巻まで読んでいちばん印象に残ったのは、このアースシーの世界の描き方が
かなり直接的に現代社会の比喩になっていそうなところです。

この3巻では不死を願う魔法使いがその力を(中途半端に)手に入れてしまい
世界の均衡が崩れかけるわけですが、彼は強大な力を手に入れても
制御が出来ない。結果、使い方を分からずに自分も幸せにはなれないのです。
これって例えば、核兵器という強大な力を手に入れた人類が、
手に入れてしまってから、正しい使い方や、力を制御する知識を
得ていなかったのに気づいてしまった、みたいに思えてしまって。
「ナウシカ」とか「ラピュタ」とかも、その路線ですよね。

また、世界で魔法の力が弱まっていることを目の当たりにしたゲドがアレンに向かって
「魔法と言うのは、その土地土地と密接にかかわりあっているという意味なんだ。(中略)
魔法をかけるということは、実は、それが行われる場所の土や水や風や光が呪文と織りなされるということなんだよ。…」と言う場面がありますが
それは、現代社会が画一的な価値観に支配され、
あちこちの伝統的な風習と軋轢を起こしていることへの比喩なのかな、とかね。

単純に、魔法の世界の心躍る冒険物語、では決してないのです。
ファンタジーと思って読むと興ざめですが、どこまでも深読みできる、それが魅力なのかも…。
by yurinippo | 2007-02-18 21:19 | book